「とりあえず休んでください」では、その後が変わってしまう
従業員から突然「体調が優れず、しばらく休みたいと思っています」と申し出があったとき、人事・労務担当者はどのように対応しているでしょうか。
「まずはゆっくり休んでください」という言葉は、相手への思いやりとして自然な反応です。しかし、その場の対応が後の復職の成否を大きく左右するということは、あまり知られていません。初動を誤ると、休職が長期化したり、復職後に再び体調を崩す「再休職」につながるリスクが高まります。
このコラムでは、厚生労働省「職場復帰支援の手引き」をもとに、休職の申し出を受けた際に人事担当者が最初に取るべき行動を整理します。
1まず「受け止める」こと面談の場を丁寧につくる
休職の申し出は、多くの場合、当事者にとって大きな決断です。「弱いと思われるのではないか」「仕事に迷惑をかけてしまう」という不安を抱えたまま、勇気を出して伝えてくれているケースがほとんどです。
この段階で人事担当者に求められるのは、まず「評価・判断しない姿勢で話を聞く」ことです。「なぜそうなったのか」という原因追及や、「もう少し頑張れないか」という説得は、この場面では禁物です。
厚生労働省「職場復帰支援の手引き」は、休職開始前の段階から会社と従業員が継続的なコミュニケーションを取ることの重要性を示しています。申し出を受けた最初の面談が、その後の信頼関係の土台になります。
また、この面談には産業医や産業カウンセラー・公認心理師といった専門職を早期に関与させることが効果的です。「カウンセリングは心が壊れた人が行くもの」というイメージを持つ方もいますが、実際には「専門家に話すことで、自分の状態を整理し、次のステップを一緒に考える場」です。申し出の段階からEAP(従業員支援プログラム)の相談窓口を案内することは、決して大げさではありません。
2「休職の流れ」を明確に伝える不安を減らすことが回復を助ける
申し出を受けた後、多くの従業員が抱えるのは「休んでいる間、どうなるのか」という不安です。給与・社会保険・連絡頻度・復職の基準、こうした情報が不明確なまま休職に入ると、静養すべき期間に余計な心理的負荷がかかります。
厚生労働省「職場復帰支援の手引き」では、休職期間中の会社と従業員のやりとりについて、過度な連絡は避けつつも、定期的かつ適切な情報共有を行うことが望ましいとされています。
人事担当者が最初の段階で伝えるべき主な事項は以下のとおりです。
- ●休職中に必要な書類(診断書の取得・提出方法)
- ●傷病手当金など経済的サポートの仕組みと申請方法
- ●会社との連絡頻度・担当窓口
- ●復職に向けたステップの大まかな流れ
これらを一度に詰め込む必要はありません。書面やガイドシートにまとめて渡すなど、後から読み返せる形で提供することが親切です。「休んでいる間も、会社はあなたのことを考えています」というメッセージが、安心感につながります。
3「職場復帰支援プラン」を見据えた準備を早期に始める
休職初期の段階から「復職をどう支えるか」を考えておくことは、人事担当者の重要な役割です。
厚生労働省「職場復帰支援の手引き」は、職場復帰支援を第1ステップ(休業の開始)から第5ステップ(職場復帰後のフォローアップ)までの5段階で整理しています。つまり、復職支援は「戻ってきてから始まるもの」ではなく、休職開始の時点からすでに動き出しているプロセスなのです。
具体的には、主治医・産業医・上司・人事が連携しながら、その方に合った「職場復帰支援プラン」を作成することが推奨されています。このプランには、復帰時の業務内容・勤務時間・フォロー体制などが含まれます。
このプロセスに産業カウンセラーや公認心理師が関わることで、当事者の心理的な状態を専門的な視点でアセスメントしながら、無理のない復帰計画を立てることが可能になります。
最初の対応が「戻れる職場」をつくる
休職の申し出を受けたとき、人事担当者に求められるのは「早く処理する」ことではなく、「丁寧に受け止め、安心できる環境を整える」ことです。
✔ 判断せずに話を聞き、専門職への相談を案内する
✔ 休職中の流れを明確に伝え、不安を取り除く
✔ 復職支援プランを見据えた早期準備を始める
この3つの初動が、従業員の回復を助け、職場への円滑な復帰につながります。一つひとつの対応が、「この会社に戻ってきたい」という気持ちを支えることを、ぜひ覚えておいてください。
参考資料
- – 厚生労働省「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」
[https://www.mhlw.go.jp/content/000560416.pdf](https://www.mhlw.go.jp/content/000560416.pdf)