「健康管理は個人の問題」という考え方、もう古いかもしれません
「社員の健康は本人の責任」「福利厚生にそこまでコストをかけられない」——そう感じている経営者・総務担当者の方は少なくないと思います。しかし、従業員の健康状態は会社の生産性や業績に直結するという考え方が、いま急速に広まっています。それが「健康経営」という考え方です。
言葉は聞いたことがあっても、「何から始めればいいかわからない」「大企業向けの話では?」と感じている方も多いでしょう。このコラムでは、健康経営の本質を3つのポイントに絞って、わかりやすくお伝えします。
1 健康経営とは「投資」の発想で従業員の健康を考えること
健康経営とは、従業員の健康保持・増進を「コスト」ではなく「経営上の投資(健康投資)」と捉え、戦略的に取り組む経営手法です。経済産業省は「従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践すること」と定義しています(出典:経済産業省「健康経営」)。
ここで押さえておきたいキーワードが2つあります。
アブセンティーズムとは、病気や体調不良によって従業員が欠勤・休職している状態のことです。見えやすいコストとして認識されやすい一方、もう一つ見落とされがちな問題があります。
プレゼンティーズムとは、出勤はしているものの、体調不良や心身の不調によって本来の能力を十分に発揮できていない状態のことです。「なんとなく出社しているが集中できない」「頭痛や腰痛をかかえながら業務をこなしている」という状態がこれにあたります。
この2つは、どちらも会社の生産性を静かに下げていきます。健康経営は、こうした「見えにくい損失」を減らすことを経営課題として捉える考え方です。
2 健康経営優良法人制度——認定はゴールではなく、出発点
健康経営に取り組んでいる企業を国が認定する制度が「健康経営優良法人認定制度」です。経済産業省と日本健康会議が共同で運営しており、大企業向けの「大規模法人部門」と中小企業向けの「中小規模法人部門」に分かれています(出典:経済産業省「健康経営」)。
中小企業でも申請・認定を目指せる制度であり、認定を受けると採用活動でのアピールや取引先への信頼向上につながるメリットがあるとされています。
ただし、ここで注意したいのは、「認定取得」を目的化してしまうことです。書類上だけ要件を満たして認定を受けても、従業員の健康が実際に改善されなければ意味がありません。認定はあくまでも「健康経営に取り組んでいることの証明」であり、日々の積み重ねの結果として位置づけることが大切です。
3 中小企業でも今日から始められる、具体的な第一歩
「健康経営は大企業がやるもの」というイメージは誤解です。経済産業省も中小企業向けの支援策を整備しており、規模を問わず取り組める内容が多くあります(出典:経済産業省「健康経営」)。
中小企業でも実践しやすい取り組みの例をいくつか挙げてみます。
専門職(産業医・保健師など)の関与が必要な領域については、まず相談できる窓口を探すところから始めてみてください。
まとめ——まず「現状を知る」ことから始めましょう
健康経営とは、従業員の健康を経営の視点で考え、戦略的に取り組むことです。大企業だけの話ではなく、中小企業でも取り組めるテーマであり、生産性・採用・定着率などさまざまな経営課題に関わっています。
まず取り組むべきことは、「自社の従業員の健康状態がどうなっているかを把握すること」です。健康診断の受診率、長時間労働の実態、ストレスチェックの集団結果——こうしたデータを経営課題として読み解く習慣が、健康経営の第一歩になります。
認定制度への挑戦も一つの選択肢ですが、まずは「従業員が健康に、いきいきと働ける環境をつくる」という本質的な目的を大切にしてください。
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