近年、「健康経営」の一環として注目を集めているのが「アンガーマネジメント」です。
「怒らないようにする」ことだと誤解されがちですが、本来の目的は「怒る必要のあることには上手に怒り、怒る必要のないことには怒らないようになる」という、感情のコントロール術です。
では、なぜ個人の感情コントロールが、企業の健康経営において重要視されているのでしょうか。今回は、組織におけるアンガーマネジメントの重要性と、明日から職場で使える基本テクニックをご紹介します。
なぜ健康経営にアンガーマネジメントが必要なのか?
① パワハラリスクの低減
2020年の「パワハラ防止法(改正労働施策総合推進法)」施行以降、企業には職場におけるハラスメント対策が義務付けられました。上司がアンガーマネジメントを身につけることは、感情的な叱責や暴言を防ぎ、結果として重大なコンプライアンス違反(パワハラ)を未然に防ぐ最強の盾となります。
② 心理的安全性の確保と離職防止
「いつ怒鳴られるかわからない」という職場環境では、社員は萎縮し、本来のパフォーマンスを発揮できません。感情が安定したリーダーのもとでは「心理的安全性」が担保され、活発な意見交換やイノベーションが生まれやすくなります。また、人間関係のストレスが軽減されることで、休職や離職の防止にも直結します。
職場で実践!アンガーマネジメント3つの基本
怒りの感情に対処するための、代表的なテクニックを3つご紹介します。
-
【衝動のコントロール】魔法の「6秒ルール」
人間の怒りのピークは、長くて「6秒」と言われています。カッとなったら、反射的に言葉を発する前に頭の中で1から6までゆっくり数えましょう。深呼吸をしたり、水を一口飲んだりするのも効果的です。この6秒をやり過ごすだけで、取り返しのつかない暴言を防ぐことができます。 -
【思考のコントロール】自分の「べき」を見直す
怒りは「挨拶はきちんとするべき」「仕事は完璧にこなすべき」といった、自分の中の「〜するべき」という理想が裏切られたときに発生します。相手と自分の「べき」は違うという境界線を認識し、許容範囲(ストライクゾーン)を少し広げてみることが大切です。 -
【行動のコントロール】コントロールできることに集中する
「過去のミス」や「他人の性格」など、自分では変えられないことにエネルギーを注ぐと怒りが増幅します。「今、自分に何ができるか(どうフォローするか、どう仕組みを変えるか)」という、変えられる未来の行動にフォーカスを移しましょう。
組織全体で取り組む「メンタルヘルス対策」へ
アンガーマネジメントは、個人の努力だけで定着させるのは困難です。会社として「怒りで人を動かさない」というメッセージを発信し、管理職向けの研修を行ったり、専門家による客観的なサポート体制を構築したりすることが、真の健康経営へと繋がります。
厚生労働省登録の専門機関として、私たちは多くの企業の職場環境改善に伴走してきました。組織のメンタルヘルスやハラスメント対策に課題を感じている場合は、ぜひ一度、産業保健のプロフェッショナルにご相談ください。