健康経営について

「健康投資」を経営者に納得させる|ROIの伝え方

「従業員の健康管理にお金をかける余裕はない」その一言をどう乗り越えるか

「健康診断はやっている。それ以上は正直、コストだ」中小企業の経営者から、こうした声を聞くことは珍しくありません。人件費や原材料費が上がり続ける今、健康関連の施策はどうしても「後回し」になりがちです。しかし、従業員の健康状態は、業績や組織の持続的な成長に影響を与える重要な経営課題である、という考え方が広がっています。

本コラムでは、総務・労務担当者の皆さまが経営者に「健康投資」の必要性を説明する際に活用できる考え方と、中小企業でも実践しやすい具体策をご紹介します。

1「健康投資」とは何かコストではなく投資である理由

「健康投資」とは、従業員の健康保持・増進に会社がお金や時間を投じることで、生産性の向上や離職率の低下など、企業にとって望ましい成果につなげようとする考え方です。これは、経済産業省が推進する「健康経営」の基本的な考え方でもあります。

経営者に説明する際、多くの場合、「費用対効果が見えにくい」という点が課題になります。そこで押さえておきたいのが、次の二つの指標です。

アブセンティーズム:病気や体調不良による欠勤・遅刻・早退など、従業員が職場にいないことによる損失。
プレゼンティーズム:出勤はしているものの、体調不良や心の不調などにより、本来の能力を十分に発揮できていない状態。企業にとっては「見えにくい損失」ともいわれています。

多くの研究では、プレゼンティーズムによる生産性の低下は、欠勤による損失を上回る可能性が示されています。そのため、これらの損失を減らすことは、健康投資の投資対効果(ROI:Return on Investment)を考えるうえで重要な視点となります。

例えば、健康施策によって体調不良による生産性低下や欠勤が減少すれば、残業時間の削減や業務品質の向上、離職防止などにつながる可能性があります。このように、健康施策によって得られる経営上の成果を、投資した費用と比較して評価する考え方がROIです。

「従業員が元気でいること」は単なる福利厚生ではなく、業務効率や品質、顧客対応力を支える重要な経営資源であることを伝えることが、経営者の理解を得る第一歩になります。

2健康経営の「見える化」認定制度を説明の武器に

経営者への説明では、「国が後押ししている取り組みである」という事実も大きな説得材料になります。

経済産業省は「健康経営優良法人認定制度」を設け、従業員の健康管理に戦略的に取り組む企業を認定しています。

2026年度も、大規模法人部門(ホワイト500)や中小規模法人部門(ブライト500)を含め、多数の企業が健康経営優良法人として認定されています。

この制度を活用する意義は、「認定を取得すること」だけではありません。認定取得の過程を通して、自社の健康課題や取り組み状況を整理・可視化できることにあります。

また、健康経営への取り組みは、採用活動、人材の定着、取引先からの評価など、企業価値に関わる要素にも影響を与える可能性があります。そのため、健康経営を「福利厚生」ではなく、「経営戦略の一つ」として位置付けて説明することが重要です。

3中小企業でも始められる小さく始めて効果を示す3ステップ

「健康経営は大企業向けでは?」と思われがちですが、中小企業だからこそ取り組みやすい面もあります。経営者と従業員の距離が近く、小さな改善でも変化を実感しやすいことは大きな強みです。

ステップ1:現状把握から始める

まずは、定期健康診断の結果や有給休暇・欠勤データなどを、個人情報保護に十分配慮しながら全体傾向として整理してみましょう。「何が経営上の損失につながっているのか」を数字で把握するだけでも、経営者の関心は大きく変わります。

ステップ2:低コストの施策から着手する

ストレスチェックを丁寧に実施することや、昼休みのウォーキングを推奨すること、保険者が実施する保健指導の活用を促すことなど、比較的低コストで始められる取り組みは少なくありません。

また、必要に応じて産業医や保健師などの専門職と連携することで、自社に合った健康づくりを進めやすくなります。

ステップ3:取り組みと変化を記録・報告する

施策の実施前後で、出勤率や欠勤日数、社員アンケートなどを比較し、その結果を経営会議などで共有しましょう。

「投資した結果、どのような変化があったのか」を継続的に可視化することが、健康投資への理解を深め、継続的な取り組みにつながります。

まとめ

「健康」を経営の言葉に翻訳する

健康投資のROIを経営者に伝えるためには、「従業員のため」という視点だけでなく、「生産性向上」「人材確保」「離職防止」「企業リスク管理」といった経営の視点で説明することが重要です。

アブセンティーズムやプレゼンティーズムという損失の考え方、健康経営優良法人認定制度という外部の信頼性、そして中小企業でも始めやすい具体的な取り組み。この三つを組み合わせることで、経営者との対話はより建設的なものになるでしょう。

健康経営は、多額の予算がなければ始められない取り組みではありません。まずは現状を把握し、小さな改善を積み重ねることが、将来の企業価値を高める第一歩となります。

参考資料

詳しい資料のご請求・お問い合わせはこちら

メンタルヘルス対策・健康経営・産業保健のご相談を承っています

無料で相談してみる

関連記事

TOP