カウンセリング

「うちの社員、誰も相談窓口を使わない」—その本当の理由と対策

相談窓口をつくったのに、なぜ誰も来ないのか

「メンタルヘルス対策として相談窓口を設置したが、利用件数がほとんどゼロに近い」——人事・労務担当者からこうした声を聞くことは珍しくありません。窓口を整備したこと自体は前向きな取り組みであるにもかかわらず、現場では「誰も使わない制度」として形骸化してしまうケースが後を絶ちません。

厚生労働省の労働安全衛生調査(実態調査)によると、強いストレスを感じている労働者の割合は依然として高い水準にある一方、実際に相談行動へ移れる人は限られているのが実情です(出典:厚生労働省「労働安全衛生調査(実態調査)」)。問題は「窓口があるかどうか」ではなく、「なぜ使われないのか」にあります。本コラムでは、その本当の理由を整理し、利用促進に向けた具体的な対策をお伝えします。

なぜ社員は相談窓口を使わないのか——3つの心理的障壁

1 「自分は重症ではない」という思い込み

相談窓口を使わない理由として最も多いのが、「自分の悩みはたいしたことがない」「カウンセリングは精神的に深刻な状態の人が行くもの」という誤解です。職場の相談窓口やEAP(従業員支援プログラム)のカウンセリングは、うつ病や重篤な精神疾患の治療を目的とするものではありません。仕事の進め方に行き詰まりを感じる、上司との関係に違和感がある、なんとなく出社がつらい——そうした「グレーゾーンの不調」にこそ、早期に話せる場が力を発揮します。公認心理師や産業カウンセラーは、問題の深刻度にかかわらず、話を整理し、本人が自分なりの解決策を見つける支援ができる専門家です。

2 「知られるかもしれない」という不安

「相談内容が上司や会社に筒抜けになるのでは」という守秘義務への不信感も、利用を妨げる大きな要因です。EAPや外部相談窓口には、守秘義務に関する倫理的基準が設けられており、本人の同意なく相談内容が職場に報告されることはありません。しかし、この大前提が社員に十分に伝わっていないケースが多くあります。窓口の存在を知らせるだけでなく、「誰に・何が・どこまで伝わるのか(あるいは伝わらないのか)」を明示することが、信頼構築の第一歩となります。

3 「どこに・どうやって相談すればいいかわからない」という手続きの壁

窓口の存在を周知しているつもりでも、「予約方法がわからない」「対面なのか電話なのか」「何分くらいかかるのか」といった具体的な情報が不足していると、行動のハードルは一気に上がります。特に、初めてカウンセリングを利用する人は「何を話せばいいのか」という不安も抱えています。アクセスの動線をできる限りシンプルにし、「まず話すだけでいい」「相談内容に正解はない」というメッセージを伝えることが重要です。

利用促進に向けて、人事・労務担当者ができること

厚生労働省は、職場のメンタルヘルス対策において、ラインケア(管理職による部下のケア)と、相談しやすい職場環境の整備を重要な柱として掲げています(出典:厚生労働省「職場のメンタルヘルス」)。制度を「設置して終わり」にしないために、以下の3点を実践的な出発点として検討してみてください。

1. 守秘義務の明文化と可視化 相談窓口の案内に「ご相談内容は、本人の同意なく職場に伝えられることはありません」と明記し、社員が安心して一歩を踏み出せる環境を整えましょう。
2. 「軽い相談」を歓迎するメッセージの発信 「深刻な悩みがなくても利用できます」「ちょっとしたモヤモヤでも話してみてください」というトーンで、定期的に窓口を案内することが大切です。社内報やイントラネット、管理職からの声がけなど、複数のチャネルで継続的に伝えることが効果を高めます。
3. 管理職がロールモデルになる 管理職自身が「こういう相談窓口を使ってみました」「部下に案内しました」と語ることで、利用への心理的ハードルが下がります。管理職向けのラインケア研修と窓口周知をセットで実施することも有効です。

まとめ——「使われない窓口」は制度の問題ではなく、伝え方の問題

相談窓口が使われない根本には、「カウンセリングは重症者向け」「相談は弱さのサイン」といった誤解と、守秘義務・アクセス方法への不安が重なっています。制度を拡充する前に、まず「正しく・安心して・簡単に使える」という3つの条件が社員に届いているかを見直してみてください。適切な時期に適切なサポートへつながれる職場環境が、メンタルヘルス対策の実効性を高める最大の鍵です。

参考資料

詳しい資料のご請求・お問い合わせはこちら

無料で相談してみる

関連記事

TOP